『グロテスク 上・下』 桐野夏生

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

本書は第2回目のアメトーーク!読書芸人でオアシズ光浦がオススメしていた。
そのとき特に思い入れがあったわけでもないけど、古本屋にあったので何となく手にしていたまま少し放置していた。

光浦もアメトーーク!内で意地の悪い小説が好きという流れで本書を薦めていたけど、本当に意地の悪い感じで、まさにグロテスクという感じだった。
ストーリーはユリコと和恵という2人の娼婦の殺人事件をきっかけとして、基本的にはユリコの姉である主人公が自分の半生を振り返る形で描かれている。
また、途中でユリコや和恵、ユリコを殺したという犯人チャンの手記・日記・告白文も混じるのだけど、主人公の語りの部分を含め全体的に冗長で自己弁護的かつ他者を貶す風に語られるので読んでいて非常にそそられない話だった。(冗長といっても、ストーリーが冗長というわけではなく、各登場人物の書いている文章が冗長という意味)

ただ、ここまで悪意と気持ち悪さを丹念に描写している意味では唸らされる。再読する気にはならないが。

社会における女性の進出と東電OL殺人事件

上巻を読み終わったあたりで初めて知ったのだけども、本書は90年代後半に起きた東電OL殺人事件をモデルにしているとのこと。東電OL殺人事件発生当初、僕はTVのない高専の寮住まいだったので、この事件については全く知らなかった。和恵が東電OLの被害者と重なるのだけど、当時東電初の女性総合職が昼間は東電のエリート社員として勤め、夜は娼婦として活動していたらしい。昼間の活動がどのようなものなのか、調べていないけども、夜な夜な娼婦として活動していたことを考えると、個人的には昼の勤務態度は良くなかったのだろうと推測する。

現在を顧みて、僕の勤めている会社でもやはりというか管理職以上は男性の割合が圧倒的なのだけど、上記事件の頃に比べ幾分でも改善していることを望む。

※そうはいうものの、仮に男性と女性の能力が均等だと仮定すると、出産・子育てという過程を踏むと場合はどうしても勤務時間が短くなるので、統計上の確率として男性に比べ出世しにくくなっても仕方ないのではないかとも思う。